外国では・・・・だった。と言うと、ちぇっかぶれやがって。と、思われることが多いけれど、やっぱり取り入れた方が良いこともあるように思う。ヨーロッパの美術館に行くと、美術館で行われている学校の美術の授業を目にするが、それを黙って見聞きしていると、これが非常に面白い。学生同士が作品について自由にディスカッションをしたり、座りこんで模写をしたり。そんな時間を積み重ねて行くと、自分の意見をはっきり言える大人になるのかもしれない。まあそのための訓練を積ませているという方が正論だろうが。
すどう美術館という個人美術館が神奈川県小田原市の外れにある。銀座にあった画廊といえば多くの人が知っているかもしれない。現在のすどう美術館は、大きな窓から緑一杯の庭が見えたり、一軒先には小川が流れ、四季折々の田んぼの風景をみることが出来る場所にある。
この美術館では夫妻の人柄もあって非常にゆっくりした時間を過ごすことが出来るので、本当にリラックスして作品を見ることが出来る。空気の違いに敏感な子供が床にゴロンと寝転んで眺めているだから、この美術館ではきっと大人が感じる以上に自然になにかを感じることが出来る空間になっているように思うのだ。
休日の午後、ヨーロッパの美術館のように、子供と一緒に床に座って、どれが一番好き?とか、なにに見える?と、
利根川佳江さんの抽象作品を前に聞くと、自由ないろいろな感想を聞くことが出来た。美術というのは緊張せずにゆっくりと見ることが出来る環境で見るのが一番いい。しかしなかなかそういう環境で優れた作品に出会うことは出来ないのが現状だと思う。
そんな会場に飾られた色とりどりの作品は、まるで呼吸をしているように見えた。少しあせた色調と素材が、強い主張なく静かに周りの空気と同化してそこにあり、柔らかそうで、凛としている作品達は、どれも作家である彼女から受ける印象に似ていた。
ゆっくり自由に見ることの出来る環境で見た作品は、見る側と共に呼吸して、見る側の中で完結した一つの作品になるのだろうと思う。