ある晴れた日曜日に息子と湘南海岸に散歩に出かけた。ファーストフード店で昼食を取ろうと席を探すと、ほとんど満席の店内の中で目の前の4人席がちょうどよく2つ空いていた。しかしそこには初々しい高校生か中学生のカップルが見つめあっていた。空気を察してか当然誰も声を掛けないので空いていたのだろう。
小さな子どもをつれていると、子どもかわいさになりふり構っていられないので、丁寧に「小さな子どもがいるので席を譲っては頂けないか?」と尋ねてみた。最初、これ以上ないくらい迷惑な顔を見せた二人だったが、女性の方は息子を見たら急ににこやかな顔になってイニシアチブをとって席を譲ってくれた。しかし男性の方は席を譲ってからもしばらく横の席で、これ以上ないくらいの不愉快そうな顔を見せていた。そのことが彼にとってデートのマイナス点にならなければいいと願うばかりである。女性はそういう心の狭い態度をその場で口に出さないで厳しくマイナスポイントに加算しているのだから。
そんな二人のやり取りをしばらく隣で眺めていて、女性は早くのうちからやっぱり母性というものが備わっていて、男性は親になってしばらくして父性というものに目覚めるのだろうと、自分の子どもがまだ口もきかなかったときは、なんだかピンとこなかったことを思い出す出来事になった。