後輩作家が参加した東京都あきる野市にある版画工房アートスタジオ五日市のレジデンス報告会の招待を受けた。レジデンスとは、宿泊施設のある工房に寝泊まりしてそこで制作発表をし、交流を深めるというアートの施設のことだが、版画の設備の整ったレジデンスといえば、このレジデンスが有名だ。
自分の経験から言って、若い作家がレジデンスに参加する意義はとても大きい。僕は若い時に世間知らずですっかり出遅れてしまって、随分年をとってからそのような体験をしたが、まだ、これから頑張ろうって時に厳しい環境でもまれて、いろいろな価値観の作家と寝食を共にする経験は、作家として国際的な視点や感覚を育むいい機会になると思う。
誰もがそのような経験が必要だとは思わないが、同じようなことをやっている人たちの中で、自分のことを全く援護してくれないような環境での滞在制作は、どのように自分が評価されるのか、冷静な目で自分自身を見つめるいいチャンスかもしれない。僕は一年間の滞在やレジデンスへの参加で、自分の良いところ、悪い所というのが本当に客観的に判断出来たように思っている。
招待状をくれた作家が、海外での体験より大変な思いをしました。と連絡をくれたが、大変な思いをしただけ経験を積んだのだろうと思う。
世界は広いと誰もが思うが、自分のジャンルを極めていくと、世界の様子が良くわかり、世界はぐっと小さくなる。レジデンスを体験することは自分の生きる世界をぐっと小さくする一歩になるだろうと思う。
(写真は2009年パリのシテデザールでのパーティー)