バルテュスの絵がとても好きだ。思い返せば20数年前に油絵の勉強をしていた時代に一番好きな画家の1人だったと思う。当時理由は分からないが本能的にひかれた。今回の展示には当時一番好きな作品が出品されていたが、時間が経っても自分の中の評価に代わりがなかった。
評伝バルテュスを読んだらどうして自分がこの作家にひかれるのか良く理解出来た。本を読む限り、僕の好きな他の作家に共通するバックボーンを持っていることが分かった。多分直感で作品の裏側にある自分の好みを見抜いていたのだと思う。基本的に孤高の人が生み出すものが好きなのだということが分かった。
展覧会の開催地上野にいくと、必ずと言っていいほど決まったレストランで食事をする。僕はスペイン料理、特にパエリアがとても好きなので、駅に隣接したスペイン料理店で必ず同じメニューを頂くことにしている。
オーダーから約20分は掛かるパエリアの到着まで2人の店員さんが僕の見ていたバルテュスのカタログを見て話掛けてきた。スペインやフランスの現地のレストランでは、他人通しがさも知り合いのように話をしている風景を見かけるが、東京のスペインレストランでも外国人スタッフがまるで現地のように気軽に話しかけてくる。
自分の興味のあることで他人とフランクに話が出来るって本当に楽しい。そんなこともあって20分はあっという間に過ぎる。雨降りの中、傘をさしながら美と食を楽しむ。慌ただしい毎日がまるで嘘のような一日となった。