多摩美術大学絵画学科油画で毎年開催されている夏の技法講座が始まった。いろいろな技法講座がある中で、僕は銅版画講座を非常勤講師として昨年から担当させて頂いている。
1.2年生を対象にした銅版画講座で、1年生は直接法、2年生は間接法を体験することになっている。先生も生徒も2週間ほど毎日講座があってびっちりとしたスケジュールで過ごすことになる。だから短い時間でもとても充実した作品が仕上がる。もともと絵を描くことになれているので、僕の予想よりも飲み込みも展開も早い。みんな黙々と作業するので、まるで受験の監督のような気持ちになる。
本当は油彩も版画同様しっかりとした技術を体系的に学ぶことで、技術的に揺らぎのない油彩画を描くことが出来るのだが、美術大学の油彩画コースというのはどこも自由な雰囲気で技術を学ぶよりは表現を探す場になっているように感じる。だから、時間ぴったりにはじまって、体系的にきちんと技術を学ぶという時間はきっとのんびりとした普段の制作と違ってはじめて受講した学生たちはびっくりしたのではないかと感じている。
技術、技術というとそんなものは。と言われそうだが、しっかりした表現を確立させるにはやはり最初に土台となる基本をしっかり学ぶ必要がある。銅版画はその典型である。また技術を知って習得するということは、どこに行っても通じる言葉を習得するのと似ていて生涯困らない一つの武器を手に入れることだと思う。現在の美術界では表現やコンセプトが優先される風潮があるが、これからプロを目指す人にはきちんとした土台をなにか一つでも持って欲しいと願って講座に望んでいる。