制作が忙しい。このブログで時々ビュランのことを書くので、最近の興味はビュランですか。と聞かれることがあるが、どちらかというとメゾチントにある。新しい作品はメゾチントの応用で作りたいので自作の器具を使って大きな版に目立てをしている。そのために黙々と器具を動かす。僕は黙々と仕事をするのが好きだ。そういえばいつもそんな仕事をしているように思う。
目立ての仕事は1分で5センチしか進まないので、不毛な仕事だと言われるが、黙々と仕事するのは楽しい。最近文章を書くようになって、自分のルーツをよく考えるようになった。両親の家庭はかつて農家だったと聞くが、そのルーツを忘れずに今でも小さな家庭菜園に向かって黙々と鍬を入れる母の姿を見ていると、メゾチントの版を作る仕事に重なるものがある。
メゾチントの目立て同様、畑を耕すのも今では機械で簡単に出来る仕事だが、母は決して機械を使わない。機械を使えば簡単にできるような時でも丁寧に手を使って仕事をする。僕はそんな母の姿を見て、いつも機械を使えばいいのに。と思っていたが、母は黙々と仕事をこなし機械を使うことはない。
たぶん母は黙々と自分の仕事を確認しながら、物事に対して丁寧に向かい合うのが好きななのだと思う。そんな母の姿を見ていると、メゾチントの版に黙々と目立てする自分の仕事は、田畑に鍬をいれて種をまく準備することに似ているように思う。
丁寧に地をならす。少しづつ目が立ち上がる様子を見ていると、次々に作りたいイメージが沸いてくる。それは畑に育つ野菜をイメージしながら畝を作ることにどこか似ているように思う。