刑事ドラマで、山の中に穴を掘って死体を埋める場面は、誰でも一度は見たことがあるポピュラーな一画面だ。しかし、まず体験することのない出来事でもある。テレビで見ている光景は、なんでも実体験を伴わないので、なんとなく簡単に思えるだが、自分で体験すると不可能だと思える。
法事で帰省した先で、大きなイノシシが死んだので、山間に穴を掘って埋める手伝いをすることになった。大人二人でやっと持ち上がるような大きさなので、人間の大人より少し小さい感じだ。軽トラで山間に運び込み、穴を掘るのだが、そんなに簡単に穴は空かない。大きな石を積み上げて土をかぶせ、また小さな石をのせて土を掛けた。山間の土を鋤簾(じょれん)で掻き出すのも見ている限り一苦労で、大きなイノシシを埋めるだけの穴を開けるのは無理だということが分かった。
夕暮れの山間で、大人3人がかりで埋め終わった頃には、石をのせるのを手伝っただけの僕の両手はクタクタだった。これを一人で行おうと思ったら、周到な準備が必要で、殺人は計画的に考えないと出来ない。と、いう結論になった。大きなイノシシは、数日前に興奮して頭をぶつけて死んでしまったと聞いた。子供の頃、可愛がっていた犬を埋めたことを思い出しながら、大きなイノシシを埋めたが、僕の二人の子供達は、初めての経験をどのように心に留めただろうか。大人になったら聞いて見たい。