この夏の間、大きな版にメゾチントの目立てをしている。とても長い時間が静かに過ぎていく。時間の経過とともに、銅板の表面が少しずつざらざらしてくる。このざらざらは刃物の研ぎに大きく影響するので、時折思い出したように作業の手を止め刃物を研ぐ。
研ぎ方は人によって大きく違うようだが、万力に固定して丁寧に中目で形を整え、アーカンサスで仕上げていく方法が安定して作業が出来るように思う。これはベテラン作家のアトリエを訪問した際に教えていただいた。それ以来この方法をとっている。
ベルソーに砥石を当てて研いでいくと、ベルソーの個々の小さな刃に砥石が当たった時に、シャーシャーと不思議な音がする。音の変化が研ぎの目安を教えてくれる。音を聞いて感覚を覚える。限りなく職人仕事だと思う。
最後はルーペで刃が欠けていないか確認するが、いい音がするときはやっぱり綺麗に研げている。