仮面ライダーというシリーズの中で、「仮面ライダー電王」というのは非常に人気のシリーズらしい。子供がいないとこんな番組には縁がないが、近年ではなかなかハンサムな俳優を登用するので、母親のファンも多いらしい。その仮面ライダーも近年は当然CGを多用して制作されているのだが、ほとんどの部分が実写で作られている。それだけに存在感があっていい。握手会に来る電王のコスチュームもフェイクとは言え良くできている。CGを否定する訳ではないが、時代の進化は早くもうCGでどんなものが作られてもそう驚きはなく、先だって公開されて話題になったアバターは、映画館に行きそびれて自宅のテレビで2Dをみるとそんなに面白い映画とは思えなかった。
そんなこともあってか子供番組の普及の名作である「機関車トーマス」の最新作を見てガッカリした。たぶんすべてCGで作られていると思う。あのなんとも言えない牧歌的な雰囲気のある映像が機関車トーマスの魅力の一つだったと思うが、それが妙に生々しい映像になってしまうと興ざめだ。想像にやさしいが、同じイギリスの発の「サンダーバード」の人形劇がすべてCGになったら、きっと気持ち悪いものになるだろう。作る側はできるだけ完璧なものを作りたいので、当然CGを多用してできる限り美しい映像を作りたかったのだろうが、すべてそれが良いわけではないと思う。ものにはそれぞれに与えられた良さというものがあるのだ。
時代はCGでリアルな偽物をつくることだけに留まらず、すべての世界で疑似を追及し、野菜の世界にも普及し始めた。これをフェイクという言い方もどうかと思うが、太陽の光をLEDに変えて室内で土から切り離して生産した野菜には土の味はしないらしい。試食した女性のコメントが恐ろしかった。「土の味がしないので美味しい」、と。人間はどこまで傲慢になるのか、そう考えると先は闇に包まれている。すべての世界から本物が不必要とされる時代がやってきたのかもしれない。そう考えると、消耗品が持て囃されるのはデフレのせいばかりでないだろうと思うのである。