久しぶりに集中して文字を書いている。筆を使ってゆっくりと書く。文字を書くなんて簡単なことだろうと、簡単に思いがちだが、決められた場所にきちんと地と図を計画して書くのは一つの訓練のたまものでもあり、感覚的な才能が必要な仕事である。1枚書いては休憩をしての繰り返しで12枚を書いているのである。当然半分を書く頃には飽きているのである。
小学校の時に、その余りの落ち着きのなさに書道教室に通わされていた記憶が蘇る。それでも落ち着いて書くことが出来ずにすぐに飽きてしまってよく先生に怒られたものだ。書道を習いにいったのか怒られにいったのか分からないなあと振り返ると思うのである。
最近は自営業ということもあって全ての責任は自分なので、少しばかり集中して落ち着きをもって物事に取り組むことが出来るようになったのだが、まるで自分のクローンのような息子は、本当に落ち着きなく「4才になるのに数字もかけない」と、彼の素行を見て彼の祖母は嘆くのある。
しかし残念ながらやはりこれは完全なる遺伝である。芸術の才能というのは遺伝しないと言われているが、性質は全く良く遺伝するのである。親の悪い所だけよく似るとはよく言ったものである。別にお喋りが悪いことだとは思わないが、口が重いのが美徳の日本男児の美徳という空気があるので、親世代ではあまりいいことだと思わないのだろう。だからできれば口だけではなく口八丁手八丁となって手も良く動くようになればいいのだと、空想か夢想かはたまた現実のことを話しているのか分からないほど口の達者な息子を見て思うのである。