1983年頃までは、松本零士のアニメーションのブームだったそうだ。代表作の銀河鉄道999は、機械化文明と戦う人間の少年の成長のお話だったが、あれから20年以上が過ぎたが、まだまだ人間が機械と戦う時代にはなっていない。
しかし、着実に機械に人間が判断され、支配される時代に近づいているのは確かだ。最新の自動販売機では、機械が購入者の性別や年齢を判断して、お勧めの飲み物を判断してくれるという。ここまでくると、アミューズメントを超えて、少し怖い気さえするのは僕だけだろうか。
日常生活の中で機械化されてもっとも便利になったうえで大量の人員を削減させたものとして、駅の自動改札があると思う。しかし随分前に近所の駅が自動改札になったことを、僕はそこを通る度に残念に思うのである。
自動改札のなかった時代、人通りもまばらな駅にいつもポツンといた年配の駅員さんは、朝夕改札を通る人達にかならず。いってらっしゃい。お帰りなさい。って挨拶をしていたように覚えている。しかし今でも人通りのまばらなことは変わらないのに、自動改札ができてから来た職員さんは挨拶もないし、顔もみない。きっと事件があって、警察に「毎日ここを通るこのひとを知っていますか」と聞かれても、さあ?と答えるに違いない。
機械化も便利で結構だけど、ますます人の判断力やコミュニケーション力を奪う技術に支配されてくると、本当に松本零士が予言のように描いた世界がくるやもしれないと、出かける度に通る改札口に無言で響く、「ピッ」というスイカを当てた時の音に不気味さを覚えるのはきっと僕だけではないと思う。