職業柄作品を見ることは多いが、心に残る作品というと数えるほどしか思いつかない。その内の一つ「貴婦人と一角獣」が日本で初公開されることになった。その大きさと作品の貴重さから、まさか海外の美術館に貸出が行われるとは思わなかったが、国立新美術館での展示の広告を見て待ちきれない気持ちでいる。
収蔵されているパリの国立クリューニー中世美術館の比較的狭い円形の部屋に掛かる大きな6作品に対峙すると、小さな教会にいるような気持ちになるのは、その作品が持つ神々しさからかもしれない。
この作品はユニコーンと貴婦人を中心に描かれている6点中5点にそれぞれ感覚に関係する寓意が当てはめられているが6点目は「我が唯一の望みに」と題されていて、この作品の意図は未だ分かっていない。そんなところがこの作品の持つひとつの魅力でもあるが、ディテールの美しさは、まさに神は細部に宿るという言葉がふさわしい。
国立新美術館は大きく天井も高い会場だが、願わくば国立クリューニー中世美術館のような円形の会場で、細部がよく見える展覧会にして欲しいと、展覧会を心待ちにしている。