昨年末、東京国立科学博物館で植物学者牧野富太郎の足跡と今展を見た。僕は美術館よりもどちらかというと博物館が好きで、旅行に出かけると必ず各地の小さな博物館に行くことにしている。職業柄、完成された作品から学ぶことも多いが、僕は物事の原点や起源に興味があるので、小さな化石や、大昔の彫刻やら訳の分からない収集物を見ながら、閑散とした部屋でひとり考えるのが好きなのだ。
この牧野富太郎は高知県に高知県立牧野植物園がある。そこには沢山の植物画や研究資料が残されていて素晴らしい植物園となっている。もう随分以前に訪れただけので機会があればもう一度行ってみたい場所の一つだ。
この牧野富太郎博士のことは、随分前に彼の植物画の展覧会を通じて知った。植物学者として著名だが、超絶な植物画を描くことでもその評価が高い。今回の展覧会には、その植物画の原画を期待して訪れたが、標本やその生涯にスポットが当たっていて、牧野本人を紹介する展覧会となっている。
僕としては植物画を見たかったのだが、標本の作り方を良く観察することが出来て楽しい展覧会となった。また昭和天皇との交流エピソードなどが印象的だ。博物学は本当に地味な作業の積み重ねで、知れば知るほど大変な仕事だと感じ入る。
牧野博士が残した標本も40万点もあるらしく、最近やっと分類の目処がついてきたとあった。あまりに楽しい展覧会だったので、帰宅後、かくかくしかじかと説明すると、周りの人はさぞ大変な思いをしたでしょうね。と冷静な意見が帰って来た。
まっすぐに生きていると本人ばかりは楽しいが、周りの人は大変だといつも思っているだということをその一言で思い知らされることになった。家族の目というのはいつも温かくもあり厳しいものなのである。
(写真は国立科学博物館日本館)