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昨年から、新しいイメージに合わせて、中心的に使用する技法をアクアチントからメゾチントに変えた。技法はイメージによって選ばれるものだと思うので、僕にとっては普通のことだけど話しても理解されないことが多い。それは一つの技法とイメージににこだわり制作を続ける人が多いからだろうか。
さまざまな技法を探求した作家の中で、駒井哲郎は著書で「技法が変われば、表現も変わる」というようなことを述べている。沢山の技法を探求した人ならではの見解だと思う。僕もその考えに同感で、最近は特にそう思うようになってきた。その結果、技法とイメージを固定しない「素描としての銅版画」シリーズが生まれた。
アクアチントからメゾチントへ技法が変化しても、削るという版へのアプローチは変わらないが、出来上がってくるマチエールというか、表情が随分異なる。メゾチントは強い色調を持ちながら、なんとく滲んでいるようなぼんやりした感じが好みに合う。アクアチントは、それに比べると乾いた感じがいい。以前はそれが好きだったけど。 メゾチントは製版として目立てが大変なのだけど、ベルソーを少しずつ動かす作業は、鉛筆を削るような作業で、気持ちを落ちつけてなにかを考えるのにいい。もちろん、版を削るスクレーパーも、良く研ぐことが大切で、5分に1回くらいは研ぐ。良く研がれた刃物で削るとサラサラと銅が削り取られ気持ちがいい。大きな紙にコンテで描き始めるように、大きなメゾ版を、大きな大きなストロークで削る。 大きな画面に、フォルムが浮かび上がる。メゾチントというと、繊細で写真のようなものを思い浮かべることが多いが、僕のは大きな彫刻ようなもの作っている感じにちかい。最終的にはメゾチントとエッチングの良いところを合わせて作ることになっている。作るのに随分と時間が掛かるが、時間が掛かっただけ、デリケートで力強い表現が出来そうで、制作の進行を楽しみに取り組んでいる。 (写真は、藤原久太郎氏考案の砥石台。砥石台は安定していてとても使い易い。愛用のDICKのスクレーパー・バニッシャーは、市販品の中で最も使い易く気に入っている)
by guruguru-kobo
| 2015-02-15 09:28
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