明日から町田市立国際版画美術館において、「森羅万象を刻む デューラーから柄澤齋へ」展が開催される。一足早く内覧会で作品を見せて頂いた。
デューラーの三大作品が一堂に並ぶことだけでも注目だが、展示作品が素晴らしい。さすが版画美術館だけあって、エングレーヴィングに特化した展示内容は、他では真似出来ないだろう。
順を追って見ていくと、大昔の作り手達が版刻方法を苦心して改良して来たことが良くわかる。単純に細かく彫られたイメージを見ることを離れて、その線の彫り方だけに注目してみると、少しの時代の違いや地域によって、同じ技法でも随分と異なる版刻になっていることに気づく。そこに注目してみると、細かく描かれた絵に見えるエングレーヴィングによる作品の中にも、さまざな工夫や違いを見ることができ、専門家には面白いだろう。
古典的な作品の合間に、金工師の技法であるエングレーヴィングを紹介するために、町田市在住の金工師の作品が展示してあることも、技法への理解を深めるアクセントとなっている。展示作品の中には、いつみてもあまりの技巧のすごさに驚いてしまうクロード・メランの《聖顔》、エドアルド・キョッソーネの《明治天皇御軍装像》が出品されていて嬉しい。
一方、もう一つの軸となっている木口木版画についても、時代を追った展示内容で、トマス・ビューイックの作品から柄澤齊氏まで、歴史を追った展覧会内容となっている。今回の展覧会は、版や道具などの展示品もあり、個人的には非常に面白い内容だ。カタログに柄澤齊氏のオリジナルが添付されていることも特筆すべき試みだろう。5月7日には尾﨑ユタカ氏のエングレーヴィングの公開制作もあり、総合的にエングレーヴィングを見ることができる貴重な機会となっている。銅版画家と木口木版画家には必見の展覧会としてお勧めできる。僕も西洋銅版画史の本を携え、もう一度か二度見に行きたいと思っている。
○写真は展覧会カタログと横浜美術館で開催中の展覧会カタログ。