ここ数年メゾチントとエッチング技法の組み合わせで制作を試みている。まだ30点弱しか完成品がないので、制作は手探りで、その都度制作上の悩みは尽きない。
この制作方法は現代では珍しいのでオリジナルだと思われるが、基本的な方法はジョン・マーティン(1789 - 1854)の作品に学んだ。魅力的な方法であるが、近、現代の作品に、この技法の組み合わせを多く見て取れないということは、印刷技術として基本的に無理があるからだと考えてもいいだろう。たしかに、やってみると製版も刷りも難しい。
メゾチントを活かすとエッチングによる線描が抜けたりする。何度もテストを繰り返すが、よい刷りを得ることは困難極まる。そんなことで、キャリアのある方達に、解決方法を尋ねてみたら意外な方法をあれこれと教えていただいた。
いろいろな話を総合すると、銅版画はやはり化学の原理を良く理解しなければならないということだろう。インクに含まれる焼き亜麻仁油の濃度コントロールによって、物質を分離したり、粘着したりする方法に注目するとやり方が変わってくる。
精度の高いプレス機を使い、コンディションの良いフェルトやラシャを使う。それも良い刷りを得るための解決方法としてひとつの答えだが、材料の持っている特性に目を向けると、簡単な器具でいい刷りを得ることが出来そうだ。
今まで慣れ親しんだやり方に疑問を持つ。新しい表現を追求するとき、新しいやり方も同時に確立する。銅版画の制作は、実験の連続でいつも面白い。