仕事柄、アートワークショップのことを考えることが多い。いいワークショップとはどのようなものだろうか。良い材料や珍しい材料を駆使して、参加者を楽しませ驚きを与えることだろうか。僕はそうは思わない。
素晴らしく発想力があるコーディネーターのワークショップは、まるで手品のように、誰もがこのようなものである。と思っている既成概念を見事なまでにひっくり返し、無理なく新しい視点を提案する。そんなワークショップは、みんなが驚きと喜びと発見を楽しめる。自分もそんなワークショップを考案出来ないものかと思い考えを巡らせるが、なかなか難しい。
類い希なる発想力で、「帯アート」というものを考えた人がいる。ある年齢以上であれば、なじみの深い着物の帯を、折り紙のように切ることなく、造形物に変化させオブジェ化するというものだ。高価な帯を傷めることなく再利用し、現代の生活の中に美しい飾りものとして取り込む発想は折り紙から着想したそうだ。
写真は、母がワークショップにはじめて参加して制作した帯アート。これが一枚の帯から作られたと聞くと、物の見方も変わるのではないだろうか。参加者は一様に驚き喜んだと聞く。このワークショップは帯という絶対的なアイコンを、自在に変化させる体験を通じて、参加者の価値観の基準に新しい1ページを作ったわけだ。
身近にあるものを見つめ自由自在に考えることは、誰もがあっと思うような新しいアプローチに繋がっているのもしれないと、鎮座している帯をみて考える。